凌霜第445号

凌霜四四五号目次
表紙絵 昭34経 岩 永 浩 明
カット 昭34経 松 村 琭 郎
◆巻頭エッセー 藤 澤 正 人
目 次
◆母校通信 松 尾 貴 巳
◆六甲台だより 行澤一人、鈴木 純、清水泰洋、四本健二、村上善道
◆本部事務局だより 一般社団法人凌霜会事務局
ご芳志寄附者ご芳名とお願い/事務局へのご寄附者ご芳名
◆(公財)神戸大学六甲台後援会だより(80)
加護野忠男先生を偲ぶ 國 部 克 彦
◆学園の窓
経済学研究科長就任にあたって 金 京 拓 司
KIBERプログラムの11年と今後の展開について 西 村 幸 宏
委任の趣旨に照らして合理的か 熊 代 拓 馬
経済経営研究所長に就任するにあたって 西 谷 公 孝
◆表紙のことば オンフルール 岩 永 浩 明
◆神戸大学の歴史的建造物
旧兼松記念館と六甲台キャンパスの建築 小 代 薫
戦後の卒業アルバムと学内メディアで見る「ここが変わった神戸大学」 住 田 功 一 36
◆六甲アルムナイ・エッセー
検事15年、国会議員6年、そして弁護士20年余 佐々木 知 子
古希を迎えて思うこと、これまでを振り返りながら 藤 田 武 夫
◆凌霜ネットワーク
ワンダーフォーゲル部創部65周年記念翔羊会総会・新年会 上 田 茂
◆六甲台就職相談センターNOW
個の躍動~楽しさを極め、人と関わる~ 浅 田 恭 正
◆学生の活動から
第74回三商大ゼミ討論会を終えて 山 崎 千 晴
◆クラス会 しんざん会、イレブン会、むしの会、神戸六七会、
四四会、東京一八会
◆支部通信 東京、神戸、福山、熊本県
◆つどい 榊原茂樹先生叙勲祝賀会、凌霜LTC30、凌霜謡会、
神漕会(漕艇部)、水霜談話会、大阪凌霜短歌会、
東京凌霜俳句会、大阪凌霜俳句会、凌霜川柳クラブ、
神戸大学ニュースネット委員会OB会
◆ゴルフ会 廣野如水凌霜KUC会、西宮高原ゴルフ倶楽部KUC、
芦屋凌霜KUC会、花屋敷KUC会
◆物故会員
◆国内支部連絡先
◆編集後記 行 澤 一 人
◆投稿規定
<巻頭エッセー>
学長再任にあたって~ひとりひとりが輝き、世界に誇れる神戸大学~
神戸大学長 藤 澤 正 人
凌霜会の皆様におかれましては、日頃から大学運営に対し多大なるご支援・ご指導を賜り心より感謝申し上げます。
さて、学長1期目の4年間が終わり、本年4月より4期目の年を迎えています。また、今年度は、令和4年4月から始まった第4期中期目標・中期計画期間の4年目の年となり、中間評価を迎える重要な年となっています。あっという間の4年間でしたが、長期的視野に立って引き続き学内外の課題にしっかりと取り組み、大学の発展のために尽力して参りたいと思います。
社会においては少子高齢化により人口ピラミッドが大きく変化するとともに、グローバル化、AI・デジタル化などの技術革新により国内外での産業構造の変革が起こり、様々な課題が浮き上がってきています。大学においても、法人化20年が過ぎ、今後の方向性を問われていますが、研究力の低下、優秀な研究人材の獲得における国際競争、大学運営に向けての財源の確保、とくに運営費交付金の基幹経費の減額を補う競争的資金、外部資金の確保、さらに人件費の増加、物価の高騰、働き方改革、大学病院経営における課題など枚挙に暇がありません。
この4年間、KU VISION 2030 『知と人を創る異分野共創研究教育グローバル拠点』を掲げ、教育研究の活性化・経営安定化に取り組んでまいりましたが、今後も社会における情報、時代の流れをしっかり掴み、従来の研究教育の枠組みを超えて、人文・社会科学と自然科学・生命科学の共創・協働により不断の改革に努め、社会から求められる、そして社会に貢献できる大学を目指していきたいと思います。そのためにも大学におけるすべての領域の卓越した研究教育資源を最大限に活用し、共に創る有機的な異分野共創研究教育基盤を強化して、社会実装に向けた知の創造と人材育成に努めるとともに継続的な力強い自律的経営基盤を作って参りたいと思っています。
国の研究力が低下しているなかで大学における研究力を向上させるためには、基礎科学と応用科学を両輪として卓越した国際競争力を持った先端的研究基盤を長期的視野でもって強化することが最も重要です。本学では、この数年間でバイオものづくり、膜工学、医工学、健康長寿、社会システムイノベーション研究拠点を中心としたデジタルバイオ・ライフサイエンスリサーチパーク(DBLR)が、大学成長のエンジンとして、着実に発展してきています。それを基盤として国立大学改革・研究基盤強化推進補助金による学内の経営改革促進事業(文部科学省)を進めるとともに、国際卓越研究大学と両輪となっている国の大型補助金事業である『地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)』を推進する地域中核・特色ある研究大学として、バイオものづくり研究とグローバル卓越人材の育成を強化しています。
この春には、バイオものづくり共創研究拠点の研究棟が神戸大学統合研究拠点の北側に竣工しました。また、昨年、膜工学領域で経済産業省『地域の中核大学等のインキュベーション・産学融合拠点整備事業』補助金と産官学連携により、産学連携本部棟の北側にバイオメディカルメンブレン研究棟が竣工し、新たな産官学連携による研究開発を加速させています。
医工学領域では内閣府『地方大学・地域産業創生交付金事業(展開枠)』からの補助金で国際がん医療・研究センターに隣接したメドテックイノベーションセンターが昨年竣工し、医工学領域における先端医療機器の研究開発が進んでいます。
これら研究施設の建設は本学の研究開発のレベルが高く評価されている証しであり、今後さらに充実させるとともに国内外から優秀な人材を結集させ、社会システムイノベーション研究拠点とも連携し、国際的な先端研究のさらなる活性化とイノベーション創出を進め、持続的なエコシステムを築いて参ります。また、これらに加えて、名谷地区には、企業との産官学連携により健康長寿研究拠点としての新たな教育研究棟の建設が始まっています。今後、DBLRにおける先端研究をさらに発展させ、全学に横展開し、世界に誇れるグローバル・イノベーションキャンパスを目指しています。
さらには、新たな成長基盤として水素・未来エネルギー、光科学、半導体開発拠点など本学として特色ある研究開発拠点を展開していきたいと思っています。また、これらの研究開発を支援する産官学連携体制など全学的な共同研究基盤機能を拡充・強化するとともに、地域産業活性化に向けてスタートアップの育成を加速するために設立したGAPファンドや神戸大学1号ファンド(KUC)に続き、2号ファンドの設立に取り組み、知の価値化と社会実装を加速いたします。
教育活動、人材育成においても、大学としてこれから取り組むべき課題は山積みです。とくに、グローバル教育の充実は、喫緊の課題です。グローバル共創教育センター(仮)の設置をはじめ学内グローバル教育体制の改革、国際活動の加速に向けて新たな助成金の獲得、基金の活用、海外同窓会との連携強化などを念頭に、学生の海外派遣支援、留学生の受け入れ促進、さらにはグローバルなキャリアパスの充実によって地域における多文化共生社会の構築に向けて取り組んで参りたいと思います。
学部教育カリキュラムにおいては、現在、取り組んでいる共通教育、語学教育改革を引き続き進めていく予定です。各学部の専門教育を念頭に共通教育、語学教育のあり方を議論するとともに、教養部解体時に合意した全学的な協力の下で共通教育を行うという方針に立ち返り改革に取り組んで参ります。
今後、18歳人口が急速に減少する中で、多様性のある学部入試改革により優秀な人材の確保に努めるとともに、研究大学として学部・大学院定員の適正化とともに大学院教育の強化・改革は必須であると思います。また、大学の研究力を高めるために優秀な博士人材の育成は、非常に重要であり、大学院入試改革、カリキュラム改革、経済的支援、キャリア支援など、様々な取り組みが必要です。国からの補助金による博士課程学生への経済的支援や大学独自で博士課程に進学する修士学生への経済的支援をすでに施行していますが、大学の基金からも追加支援をしていきたいと思います。また、早期博士学位取得制度(6年間)などの学部・大学院一貫教育の拡充、新教育領域の創出を進め、博士課程への進学を促して参ります。
また、博士取得後のキャリアパスについては、研究者のみならず多様な分野での活躍を促進するために産官学連携によるインターンシップを充実させて参ります。さらに、みらい開拓人材育成センターを中心に高大接続を強化し神戸大学として特色のある一貫した卓越教育プログラムの構築を進めて参ります。
今春には、医学部医療創成工学科、高度情報専門人材育成に向けたシステム情報学部が開設されます。『大学・高専機能強化支援事業』ハイレベル枠補助金(文部科学省)により、システム情報学研究科の教育研究機能も強化され、情報価値創造教育棟が建設中です。さらには、大学の知の還元に向けたリカレント教育事業もリカレント教育推進室を中心に拡充してきており、大学の重要な社会貢献事業として推進して参ります。
今後も学生に求められる、社会に評価される教育研究組織改革を大学として支援し、次世代を支える優秀な若手研究者、若手教員が、研究に専念できるような環境の整備やダイバーシティ推進の観点から女性の教員雇用や昇進支援を加速し、全学における若手や女性の研究者の活躍を支援したいと思います。
大学の財務状況は、年々厳しくなってきています。とくに人事院勧告によるさらなる人件費の増加、物価上昇、附属病院の経営不振など、大学、病院ともに苦難の年が続くと思いますが、これは神戸大学だけに限ったことではありません。計画的な蓄財により様々な中長期事業計画を確実に実行するために経営改革をしっかり進め、難局を乗り越えていきたいと思います。
国に働きかけていた運営費交付金の増額はなく、残念ながら昨年と全く変わりませんでした。非競争的な基盤的予算配分は年々減る一方で、競争的な資金である科学研究費、共同研究費、助成金、寄附金などの外部資金をしっかり獲得し安定的な成長基盤を築いていくことが、これからの大学運営において重要であることは間違いありません。これらが増えなければ今のところ大学として投資できる全体予算も増えることはなく、国だけではなく自己資金で賄っている教育研究支援事業、図書館などの研究教育基盤の充実、施設設備の改修、大学の運営管理事業などに支障をきたすこととなります。今や、この外部資金による間接経費こそが、大学を支える財の源泉となっています。したがって、構成員それぞれが他人事ではなく大学の厳しい現状を理解し、一丸になって共創と協働を進め、立ち止まることなく成長し続けることが重要です。
低調であった神戸大学の外部資金は、令和2年度末の135億円から令和6年度末に約208億円まで伸びてきていますが、長期的な視野に立てば十分とは言える状況ではありません。しっかりと伸ばし、様々な全学的取り組みや部局、個人へのインセンティブ配分に向けて財を循環させシェアできるようにしていきたいと思っています。
今後もKU VISION 2030を共有し、未来を見据え健全なる危機感を醸成して、学問の府として自由な教育研究環境をしっかり確保し、基礎・応用科学研究における様々な大学の潜在的な力を結集して新しい成長基盤を創出し、共創と協働により特色のある既存の研究の強化と新規性、独創性のある教育研究事業を推進し、国内外において神戸大学の優位性を高めるとともに、地域・社会の課題解決やイノベーションの拠点としてもその機能を強化し、地域に根ざし、世界に誇れる研究大学として発展して参りたいと思います。