凌霜第432号 2022年01月11日

 

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凌霜四三二号目次

 

表紙絵 昭34経 岩 永 浩 明

カット 昭34経 松 村 琭 郎

◆年頭にあたって   大 坪   清

<目 次>

◆母校通信   中 村   保

◆六甲台だより   行澤一人、鈴木 純、清水泰洋、四本健二、村上善道

◆『国民経済雑誌』定期購読のご案内

◆本部事務局だより   一般社団法人凌霜会事務局

 令和3年9月度臨時理事会/代議員選挙のお知らせ

 第3回支部代表者会議開催/ご芳志寄附者ご芳名とお願い

 事務局への寄附者ご芳名

◆(公財)神戸大学六甲台後援会だより(67)

◆大学文書史料室から(41)   野 邑 理栄子

◆学園の窓

 When I'm Sixty-Four   高 橋   裕

 オーロラのような神戸大学を思い描いて   ロニー・アレキサンダー

 教育研究環境を取り巻く変化   佐 野 晋 平

 アジャイルな対応をこころがけて   戸 梶 奈都子

◆表紙のことば 初冠雪の伊吹山   岩 永 浩 明

◆六甲アルムナイエッセー

 わが人生のダイバーシティ

  ―日銀、外銀、国立・公立・私立の各大学に奉職―   立 脇 和 夫

 凌霜とともに〜地元で紡いだ私の履歴書〜   山 本 亮 三

 コロナ禍を乗り越えて   岡 田 康 夫

 米中経済と日本企業を考える   岡   豊 樹

◆凌霜ネットワーク   辻 本 健 二

◆六甲台就職相談センターNOW インターンシップについて   浅 井 隆 司

◆凌霜ひろば

 凌霜三代 赤い糸   谷 口   明

 431号六甲アルムナイエッセー

  「私の『人生二毛作』」(島田 恒著)を読んで   原 木 庄 助

 重要文化財でお遍路さんお接待   渡 部 浩 三

◆クラス会 互志会、しんざん会、三四会、イレブン会、むしの会

◆支部通信 東京、神戸

◆つどい 翔羊会、神大クラブ、水霜談話会、東京凌霜俳句会、

     大阪凌霜俳句会、凌霜川柳クラブ、

     神戸大学ニュースネット委員会OB会

◆ゴルフ会 名古屋凌霜ゴルフ会、芦屋凌霜KUC会、花屋敷KUC会

◆追悼 横井保夫君(平16法後)を悼む   中 島 和 樹

◆物故会員

◆国内支部連絡先

◆編集後記   行 澤 一 人

◆投稿規定

年頭にあたって

一般社団法人凌霜会理事長 大  坪     清

(レンゴー㈱会長兼CEO)

 

 凌霜会会員の皆様、新年明けましておめでとうございます。各地で穏やかに、そして健やかに新年を迎えられたことと心からお慶び申しあげます。

 

 凌霜会は1924(大正13)年9月に設立され、今年で98年目を迎えます。大正から令和に至る長きにわたり、諸先輩方が築き上げてこられた凌霜の歴史を守っていくとともに、次代を担う若い凌霜の皆様へ歴史と伝統を引き継いでいけるよう、会の運営に全力を尽くす所存です。皆様方には、これまで以上のご支援ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申しあげます。

 

 昨年を振り返ると、一昨年と同じく年初より新型コロナウイルスの感染拡大に翻弄された一年でした。一昨年の大晦日に東京都の新規陽性者数が1,000人を超えたことが大きく報道されたことはまだ記憶に新しいところですが、いわゆる第5波のさなかにあった昨年8月には国内の新規陽性者数が25,000人を超え、医療機関では病床がひっ迫し自宅療養者が多数発生するところとなりました。

 東京や大阪といった大都市圏のみならず、多くの都道府県で緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発出される事態となり、行動制限により人の動きが大幅に減少した影響を受け、観光業や飲食業をはじめとした多くの産業が大打撃を受けました。

 しかしながら、病床の確保やワクチン接種の進展など官民一体となったさまざまな取組みや、加えて日本人ならではの決められたルールはしっかりと守るという国民性も功を奏し状況は大幅に改善、行動制限の緩和により人々の消費行動も徐々に拡大しつつあります。

 経口薬など治療薬の実用化も道筋が見えてきていますが、新型コロナウイルスが消えてなくなることはなく、今後も感染拡大の波はあるものと思われ、我々はウィズコロナの前提で物事を考えていく必要があります。感染拡大を最小限に抑え医療ひっ迫を避けるための方策と、一方では大きく傷ついた日本経済を立て直し再び成長軌道に乗せるべく補助金や給付金をはじめとした施策が検討・実施されていますが、我々一人ひとりがウィズコロナのなかで経済活動を正常化させるためには何をすべきなのか、真剣に考え実行に移していくことが求められていると考えます。

 神戸大学においても、ホームカミングデイが2年連続で対面開催の中止を余儀なくされましたが、下期からは感染防止措置を十分に行ったうえでの対面授業が再開されるなど、徐々に日常を取り戻しつつあります。学生の皆さまが神戸大学で学ぶ喜びをしっかりと実感することができるよう、あらゆる対策が講じられることを望みます。

 

 新型コロナ感染拡大は、社会構造の大きな変革も引き起こしました。それはDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展です。ICT技術の発達や、わが国においては東京オリンピック・パラリンピックを見据えたリモートワーク環境の整備が進んでいたことも背景にありますが、新型コロナの感染拡大により、人と人とのリアルな交流が大幅に制限されたことが、図らずもDXの進展、普及を大きく推し進めたことも事実です。

 ビジネスの場面では、オンラインでの会議をはじめインターネットを介してコミュニケーションをとることが当たり前のこととなりました。コンピューターや通信機器のみならず生産設備等の機械もインターネットにつながり、その場にいなくともリアルタイムで状況をつぶさに知ることができるようになりました。それ以外の場面においても、ネット通販やSNSなど、今やインターネット技術の恩恵を受けていない人はいないのではないかと思います。

 その一方で私は、デジタルとバーチャルの反対にあるもの、アナログとリアルの重要性が見失われてしまうことを非常に危惧しています。DXの「トランスフォーメーション」は変化、変換と訳されますが、変化させていくためにはその本質、すなわちデジタル以前のアナログの世界を理解する必要があります。アナログの世界で何が起こっているのか、その因果関係を完全に理解して初めてデジタルの世界が理解できるようになります。また昨今、SNS等の発展が逆に孤独感を強めていると言われます。これも、人と人とのリアルなつながりや、自分の頭で感じ考えることが希薄になってしまったことの弊害ではないでしょうか。

 私は社内でも、部署の垣根を越えたリアルな人と人とのコミュニケーションや、まずは自分ひとりで、自分の頭で考えてみることの重要性をことあるごとに言い続けています。今世界中でSDGs(持続可能な開発目標)の達成を目指し、さまざまな取組みが進められていますが、サステナブルであるかどうか、持続可能性を保ち続けられるかどうかのカギとなるのは、人間の「知の力」です。その力を高めるためには、アナログとリアルの重要性を今一度認識することが必要であり、そのためには教育の存在が不可欠である、と考えます。

 

 世界に目を向けますと、米国では昨年1月にジョー・バイデン氏が大統領に就任し4年ぶりに民主党が政権を担うこととなり、中国では11月の6中全会で歴史決議を採択し習近平氏の3期目の党総書記就任に道筋をつけた形となりました。

 米中間には、台湾問題をはじめとした安全保障上の問題、ウイグルや香港における人権問題、通商問題、気候変動に関する問題といった課題があり、それは外交上においても、地政学上においても我が国に多大なる影響を与えるものです。我が国では、米国との同盟関係を重視しつつ、隣国として中国に対していかに対峙していくか、難しいかじ取りが求められています。

 そのような中、昨年10月に新たに岸田内閣が誕生しました。岸田総理は自らの特技を「聞く力」であると表現されましたが、これはアナログやリアルの世界を大事にする、ということにもつながっていると考えます。新型コロナへの対応は引き続き大きな政治課題であり、一方で経済対策や経済安全保障、外交・安全保障においても多くの課題が立ちはだかっていますが、聞く力をベースにリーダーシップを発揮し、国益にかなった安定した政権運営をしてくれるものと期待しています。

 

 さて、2022年は、1902(明治35)年設置の官立神戸高等商業学校を起点とする母校神戸大学が、創立120周年を迎える記念すべき年であります。これまで「学理と実際の調和」を理念とし、社会で活躍する多くの人材を輩出してきましたが、創立120周年の節目を迎えるにあたり「傑出する"知"を創る」こと、「卓越する"人"を創る」こと、そして研究・教育の進展と社会貢献への寄与を使命とされ、その環境面の充実を図り、「異分野共創研究教育グローバル拠点」としてニューノーマル時代における研究・教育をリードしていくことを目指し、様々な取組みが進んでいます。伝統を継承しながらも時代の変遷に即した変革を実行し、常に新たな価値を創造し続けていただきたいと考えています。

 

 2022年の干支は壬寅(みずのえとら)です。「壬」は「妊に通じ、陽気を下に姙(はら)む」、「寅」は「蟺(みみず)に通じ、春の草木が生ずる」という意味があるとされています。厳しい冬を越えて芽吹き始め、新しい成長の礎となる年であり、現状に当てはめてみれば、2年間にわたり世界中に苦しみを与えた新型コロナウイルスへの対応策が確立され、成長に転じる明るい年になることが期待されるのではないでしょうか。

 

 最後になりましたが、凌霜会諸兄姉の皆様には日頃から、会員の増強、寄附金など多岐にわたるお願いをいたしておりますが、今後とも、凌霜生としての誇りと絆を繋ぐよりどころとしての当会活動を何とぞご支援賜りますとともに、我々も凌霜会の目的である「会員相互の研鑽と親睦」そして「母校支援」を胸に、共に母校のより一層の発展に向け努力してまいりたいと存じます。

 本年が皆様方にとって素晴らしい年となりますことを心より祈念申しあげ、新年にあたってのご挨拶とさせていただきます。