凌霜第420号 2019年01月15日

表紙 与那国島東崎灯台朝焼け.jpg

凌霜四二〇号目次

表紙写真 昭45経 神 谷 隆 史

カット 昭34経 松 村 琭 郎

◆年頭にあたって              大 坪   清 

目 次       

◆巻頭エッセー 計算社会科学研究センターの新設について        上 東 貴 志 

◆母校通信      藤 田 誠 一 

◆六甲台だより    行 澤 一 人 

◆本部事務局だより          一般社団法人凌霜会事務局 

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◆(公財)六甲台後援会だより(55)      (公財)神戸大学六甲台後援会事務局 

◆大学文書史料室から(29)        野 邑 理栄子 

◆凌霜俳壇  古典和歌  

◆表紙のことば 与那国島 東崎灯台朝焼け        神 谷 隆 史 

     研究科長就任のご挨拶と教育改革の状況について    中 西 訓 嗣 

     シリコンバレーの雰囲気      内 田 浩 史 

◆学園の窓 バンクーバーでの在外研究  砂 原 庸 介 

     留学生とともに20年―       金 子 由 芳 

           アジア諸国の法政策を探り当てる日々

◆野尻武敏先生(昭24)の思い出             丸 谷 泠 史 

◆山本弘先生、ありがとうございました  青 木   哲 

◆凌霜ゼミナール 神戸大学で取り組む認知症予防〝コグニケア〟          木 戸 良 明 

◆六甲台ゼミ紹介 法学部・角松生史ゼミ(行政法演習)            藤岡涼祐・富田明日華 

◆学生の活動から 第39回六甲祭を終えて          秋 山 由 奈 

◆母校礼賛      久 米 浩 文 

◆六甲台就職相談センター NOW ファクトと本質      浅 田 恭 正 

◆クラス大会 さんさん会、凌霜26回    

◆クラス大会予告 三四会            

◆クラス会 しんざん会、さんさん会、三四会、珊瑚会、イレブン会、  

      むしの会、神戸六七会、四四会、よつば会、互礼会、二四会

◆支部通信 東京、京滋、大阪、神戸、香川、愛媛県、高知県、デトロイト        

◆つどい 幸ゼミ、竹の子会、三木谷会、喜楽会、男声合唱団グリークラブ、    

      美術部凌美会OB会、馬術部、丸紅凌霜会、ダイキン凌霜会、

      水霜談話会、大阪凌霜短歌会、東京凌霜俳句会、大阪凌霜俳句会、

      凌霜川柳クラブ、神戸大学ニュースネット委員会OB会

◆ゴルフ会 凌霜霞会、名古屋凌霜会、芦屋凌霜KUC会、廣野如水凌霜会、    

      能勢神友会、垂水凌霜会、花屋敷KUC会

◆追悼

馬術部・宮澤正郎先輩(昭28)を偲ぶ 坂 根 利 彦 

畏友横田正次君(昭37営)を悼む        望 岡 督 司 

◆物故会員      

◆国内支部連絡先              

◆編集後記      行 澤 一 人 

◆投稿規定 

年頭にあたって

一般社団法人凌霜会理事長 大  坪     清

(レンゴー㈱会長兼社長)

 凌霜会会員の皆様、新年明けましておめでとうございます。各地で穏やかに、そして健やかに新年を迎えられたことと心からお慶び申しあげます。

 凌霜会は1924(大正13)年9月に設立され、今年で95年目を迎えます。大正、昭和、そして平成の長きにわたり、諸先輩方がこれまで築き上げてこられた凌霜の歴史に思いをはせるとともに、次代を担う若い凌霜の皆様にしっかりと歴史と伝統を引き継いでいけるよう、決意を新たに会の運営に全力を尽くす所存です。皆様方には、これまで以上のご支援ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申しあげます。

 昨年は、多くの自然災害に見舞われた年でした。年初には北陸地方が記録的な豪雪となり、6月には大阪府北部地震、7月には平成30年7月豪雨、9月には台風21号、北海道胆振東部地震が立て続けに発生し、広範な地域において甚大な被害をもたらしました。いずれもこれまでの経験や常識では予測不可能であり、もはや異常気象が日常であると覚悟すべきだと考えます。家屋の損壊やライフラインの寸断などにより多くの被災者の方々が不自由な生活を余儀なくされたことに加え、鉄道や空港施設といった交通網の被害による混乱、大規模な停電など、自然の力の前にいかに人間が無力であるかを思い知ることとなりました。しかしその一方で、厳しい環境の中でもお互いに助け合う人々の絆、想定を上回るスピードで復旧を成し遂げる日本企業の技術力など、我が国が持つ底力を改めて知ることにもなりました。「転ばぬ先の杖」という言葉があります。自然災害そのものを防ぐことはできませんが、いざという時にどのように対応すればよいのか、何を備えておくべきなのか、一人ひとりがこの機会に真剣に考える必要があります。

 また昨年は、これまで以上にボランティアが脚光を浴びた年でもありました。災害などの困難な場において、自衛隊や警察、自治体など公の立場にある方々の献身的な活動があったことはいうまでもありませんが、多くの民間ボランティアの方々の力が早期の復旧に大きく貢献したことは間違いありません。ボランティア(volunteer)とは、誰かに言われて行うものではなく自発的に行うものであり、そこには必ず自分の意志(will)が伴います。自分ですすんで行動しているつもりでも、実は過去からの流れに沿った行動をしているだけということがあります。行動を起こすとき、まず自分で考え、自分の意志を入れること、その習慣をつけることが重要です。そのために必要なものは何でしょうか。福沢諭吉は「学問のすすめ」のなかで、雲と泥の相違、賢人と愚人の差は、学ぶと学ばざるとによって生まれるものであるとし、そして、学ぶべきは人間普通日用に近き実学である、と言っています。実学とは、いわゆる「読み書きそろばん」です。英語でいえば「literacy」と「numeracy」です。実学をきちんと身に着けることが、自分の意志を持った行動の基礎となります。今やスマートフォンさえあれば、人差し指一本で世界中のさまざまな情報を得ることができます。しかしインターネットに頼りきり、情報を鵜呑みにして理解したように錯覚し、自分で考える癖が無くなってしまうとすれば、これは由々しき事態です。情報が氾濫し簡単に手に入れることができる現代だからこそ、実学、「literacy」と「numeracy」をしっかりと身に着けることが大切であり、若者が社会に旅立つための最終的な準備を整える、大学を中心とした高等教育の重要性がより一層高まっていると言えます。

 また昨年は、2015年9月の「国連持続可能な開発サミット」において採択された持続的な開発目標:SDGs(Sustain-able Development Goals)の実現に向けて、我が国が本格的に動き出した年でもありました。関西においても2017年12月に関西SDGsプラットフォームが設立され、SDGsの重要性を広くアピールするとともに、その活動を加速しているところです。SDGsは、持続可能な世界を実現するための17のゴールと169のターゲットから構成されています。その実現に向けては、政府機関や自治体のみならず、企業や大学、研究機関といった民間におけるイノベーションが重要な役割を担うことが期待されています。

 「三方良し」という言葉があります。これは近江商人の心得である、売り手良し、買い手良し、世間良し、の三つの「良し」を表したものですが、現代においても多くの日本企業の行動規範、経営方針のなかに根付いています。企業や組織が存続していくためには利益を上げていかねばなりませんが、それだけではなく、事業活動を通じてあらゆるステークホルダーの幸福や社会全体の発展に貢献することが重要であるとの認識が一般的なものとなっています。そのように考えれば、我が国においてSDGsは特別なことではなく、日々の活動を通じて実現していけるものだと言えます。SDGsは2030年までを見据えた国際的な開発目標です。これから社会へ羽ばたいていく若い凌霜の皆様が主役となり、その目標実現のためにまい進していただきたいと思っています。

 世界に目を向けると、トランプ米国大統領の動向が様々な局面で大きな影響をもたらしています。アメリカ・ファーストを掲げ実現したトランプ政権ではありますが、保護主義的な政策は世界にとって決して望ましいものではありません。なかでも自国の貿易赤字解消を目的とした追加関税措置の発動に端を発する米中間の貿易戦争の過熱が、世界経済の不確実性を高めています。貿易戦争に勝者は無く、2008年のリーマン・ショック以降の景気回復局面に水を差すことが懸念されます。

 北朝鮮の脅威は、韓国文在寅大統領の融和路線、米朝首脳会談の実現によって一時より後退したように見えますが、核放棄へ向けた道筋が示されないなど北朝鮮の動きは依然不透明なままであり、加えて中国の習近平国家主席、ロシアのプーチン大統領の動向も考え合わせれば、早期打開は微妙な状況です。拉致問題も未解決であり、今後の安全保障を見据えたうえで冷静な対応が求められます。

 このような世界情勢のなか、安倍首相は昨年9月の自民党総裁選で三選を果たし、本年11月には第一次安倍政権からの通算で憲政史上最長の首相在任期間となります。トランプ大統領とも良好な信頼関係を構築しており、日米同盟の強化においても大きく寄与しています。習近平国家主席、プーチン大統領も長期にわたる政権基盤を確立しており、これら周辺国と対等に伍していくうえでも、安倍首相の長期政権は国益の観点から大きな意味を持つと考えます。

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックをはじめとしたイベントや、堅調なインバウンドを背景に日本経済は堅調に推移していますが、一方で本年10月に実施予定の消費税率引き上げや、世界経済の不安定さといった懸念材料もあります。安倍政権が国内においてもリーダーシップを大いに発揮し、安定した政策運営、経済成長を成し遂げることを期待しています。

 さて、母校神戸大学では、2004年の国立大学法人化以降の大学改革の大波の中、2015年に「先端研究・文理融合研究で輝く卓越研究大学へ」のビジョンを掲げ、研究、教育、国際、社会貢献という観点から「学理と実際の調和」を発展させ、世界最高水準の教育研究拠点の構築、現代および未来社会の課題解決へ向けた新たな価値の創造に向けて、さまざまな施策に取り組んでいます。2013年度に文部科学省が創設した研究大学強化促進事業に採択されており、一昨年の中間評価では文理融合研究領域の創出の進展等が評価され、5段階評価のうち上から2番目となるA評価を得ています。昨年6月、世界大学評価機関である英国のクアクアレリ・シモンズ(Quacquarelli Symonds)が、2019年版世界大学ランキングを発表しました。1位はマサチューセッツ工科大学(米国)、2位はスタンフォード大学(同)、3位はハーバード大学(同)となっており、東京大学(23位)、京都大学(35位)、東京工業大学(58位)と続き、神戸大学は東京医科歯科大学とならび352位、国内大学の中では13位でした。国内大学は1000位までに44校、うち100位内には5校がランクインしています。評価指標をみると、学生一人当たりの教員比率は比較的高評価ですが、外国人教員比率、留学生比率が低く、国際化のさらなる進展が望まれます。目標とする100位以内へのランクインへ向けて、あらゆる方面で研鑽を積んでいただきたいと思います。

 2019年の干支は己亥(つちのとい)です。己は植物が十分生長し形が整然としている状態を表し、亥は草木の生命力が種の中に閉じ込められた状態を表すとされています。足元を固めて内部の充実を図り、これからの飛躍成長に向けてしっかりと準備していく年であるといえるでしょう。

 最後になりましたが、凌霜会諸兄姉の皆様には日頃から、会員の増強、寄付金など多岐にわたるお願いをいたしておりますが、今後とも、凌霜生としての誇りと絆を繋ぐよりどころとしての当会活動を何とぞご支援賜りますとともに、共に母校のより一層の発展に向け努力してまいりたいと存じます。

 本年が皆様方にとって素晴らしい年となりますことを心より祈念申しあげ、新年にあたってのご挨拶とさせていただきます。

  

巻頭エッセー

計算社会科学研究センターの新設について

計算社会科学研究センター長 上  東  貴  志

 あけましておめでとうございます。神戸大学計算社会科学研究センター長の上東貴志でございます。

 私は平成26年4月から平成30年3月まで、神戸大学経済経営研究所長を4年間にわたり務めました。その間、経済経営研究所創立100周年記念事業を開始し、平成29年3月には、計算社会科学研究センターを経済経営研究所内の組織として立ち上げました。同センターは、平成30年4月より全学の基幹研究推進組織となりました。私は同時に計算社会科学研究センターの主配置教員となり、同センター長となりました。ただし、私が経済経営研究所に配置されていることには変わりありません。

 この「配置・主配置」というのは我々教員もまだ慣れていない制度で、効率的な組織改編と人員配置を目的とした組織改革の一環として、武田学長主導のもとに平成28年度に導入されました。現在、計算社会科学研究センターには主配置教員が6名、配置教員が14名おりますが、内6名は理系部局からの配置です。このような全学組織を極めて短期間に新設できたのは、組織改革の大きな成果です。

 さて、計算社会科学は、近年急速に発展しているビッグデータや計算技術に基づく社会経済現象の研究であり、社会科学、データサイエンス、計算科学の3領域が重なった部分を中心とする文理融合・複合領域です。特に、オンライン上で取得可能なビッグデータ、コンピュータ・シミュレーション、及びデータとシミュレーションに基づくネットワーク分析が現在の主な分析ツールです。この新たな領域は、インターネットの普及以来、20年以上にわたり発展し続けているIT産業と密接な関係があることは言うまでもありません。現在、米国のGoogle、Amazon、Apple、Microsoft等の巨大IT企業が世界を席巻し、中国からもアリババ等の巨大IT企業が台頭していることは周知の事実ですが、これらの企業と渡り合える日本企業は皆無です。平成30年10月現在、世界時価総額ランキング50にはトヨタが44位に入るにとどまり、グローバル・ビジネスにおいて、日本はまさしくボロ負け状態が続いています。

 IT産業と同様に、欧米を中心に急速に発展している計算社会科学においても、日本は世界に取り残されつつあります。世界的に、Google、Amazon、Wikipedia等から入手可能なデータを使った研究が盛んに行われていますが、日本の社会科学研究者の間では、そういった研究の存在自体があまり知られていない現実があります。上述の巨大IT企業等は、ビッグデータを専門とする多数の研究者を雇用しており、研究面での格差にも拍車をかけています。

 幸い、計算社会科学はまだ歴史の浅い研究領域であるため、日本がこれから世界のトップに躍り出る可能性は十分にあります。ただし、ここ数年以内に国内の研究レベルを国際レベルにまで押し上げないと、グローバル・ビジネスと同様の構図が研究面においても確定してしまう懸念があります。計算社会科学研究センターは、計算社会科学に特化した国内初のセンターとして、国内の研究レベルを国際レベルに押し上げ、さらには、世界的に同領域を牽引することを目的としています。

 しかし、平成30年4月時点において、神戸大学には似たようなセンターが既に2つもありました。計算科学教育センターと数理データサイエンスセンターです。計算社会科学研究センターは、これらのセンターとどう違うのか?というのは当然の疑問で、私は実際によく聞かれます。端的に言えば、最大の違いは、計算社会科学研究センターは、ビッグデータと計算科学を用いた社会経済現象の国際的先端研究に特化している点です。計算科学教育センターの主目的は計算科学の教育・普及であり、数理データサイエンスセンターは、データサイエンス全般の全学的な教育カリキュラムを実施しつつ、研究面では産学連携を重視しています。対照的に、計算社会科学研究センターは、社会科学における国際的先端研究に特化しています。それにしても似たようなセンターが3つもいるのか?という声が聞こえてきそうですが、神戸大学はそれだけ計算科学と社会科学を重視しており、それを大きな強みとしていることに他なりません。同様の状況は、経済学・経営学にも当てはまります。

 多くの大学では、経済学と経営学は、経済学部・大学院経済学研究科の中の学科として区別されています。そのため、経済学と経営学の違いは専門外の方にはあまり意識されていません。私自身は経済学者ですが、経済経営研究所長在任中は、経済学と経営学の違いに関する質問は多くの方からいただきました。当事者としては、経済学と経営学は研究対象もアプローチも異なるため、全く違う学問なのですが、専門外の方にとっては、そういった相違点もあまり大きなものには感じないようです。

 しかし、神戸大学には、経済学部・経済学研究科、経営学部・経営学研究科に加え、経済経営研究所があり、社会科学を重視した総合大学としての大きな強みとしています。経済学部・経済学研究科しか持たない一部の旧帝国大学と比べ、神戸大学が優位に立っているのはそのためです。これは数だけではなく、歴史と伝統の面での強みでもあります。昭和24年に新制神戸大学に設置された経営学部は、国内初の経営学部であり、大正8年に神戸高等商業学校に商業研究所として設置された経済経営研究所は、社会科学系の国立大学附置研究所として最長の歴史を有しています。

 歴史と伝統を誇る経済経営研究所ですが、京都大学には経済研究所があり、大阪大学には社会経済研究所があるため、関西に経済系の研究所が3つもいるのか?という同様の批判に常に晒されています。そういった批判に対しては、経済経営研究所は経済学だけでなく、経営学の研究も行っていることが特徴であると説明するわけですが、そこで、経済学と経営学は大差ないのではないかという上述の問題に戻ることになります。

 同様の状況は、神戸大学全体にも言え、京都大学、大阪大学という旧帝国大学があり、学生数が減少の一途を辿る中、関西に3つも国立大学が必要なのか?という意見もあります。そういった際には、神戸大学は社会科学を強みとする総合大学であることが最大の特徴であると説明します。凌霜会員の皆様に支えられている神戸大学の社会科学は、京大、阪大に引けを取りません。例えば、私が専門とする経済学に関しては、Re Pecという世界中の経済系教育研究機関の研究力を、国際基準に基づいてランク付けしているサイトがあり、比較しやすい状況にあります。ランキングを詳しく見てみますと、経済経営研究所は平成30年10月現在、国内6位で、京都大学経済研究所(10位)、大阪大学社会経済研究所(11位)に大きく差をつけています。同様に、本学経済学研究科は国内7位で、大阪大学経済学研究科(14位)、京都大学経済学研究科(19位)に大きく差をつけています。したがいまして、研究面においては、神戸大学の経済学は関西一であると言っても決して過言ではありません。これは、神戸大学が伝統的に経済学・経営学を中心とした社会科学を重視してきたことに加え、凌霜会員の皆様の絶え間ないご支援の賜物であります。

 国内で最も長い歴史と伝統を有する経済経営研究所ですが、本年10月には創立100周年を迎えます。ここ数年間にわたり凌霜会員の皆様を中心にご寄付をお願いしておりましたが、創立100周年の年を迎えました今、改めてご支援をお願いさせていただければと思います。現在、目標金額7、000万円に対し、お陰様で5、000万円を超えるご支援をいただいております。本年10月までには目標金額を達成したいと考えております。この募金は、私自身が経済経営研究所長時代に開始したのですが、当初は目標金額が無謀であると失笑を受けました。しかし、凌霜会員の皆様とご相談を重ね、計画を練り、多方面にご支援をお願いした結果、目標金額に手が届くところまで到達することができました。今回の会報に募金趣意書を同封しておりますので、改めてご支援をお願いしたい次第です。

 趣意書に書かれておりますとおり、計算社会科学の研究は、経済経営研究所創立100周年記念事業の主要事業の一つであります。これまでのご寄付により、計算社会科学における世界初の英文学術雑誌「Journal of Computational Social Science」を平成30年1月に創刊することができました。同ジャーナルの編集委員長は私・上東が務め、お陰様で、計算社会科学における先端研究を世界的に推進する立場に立つことができました。

 同ジャーナルの創刊が計算社会科学研究センターの全学組織への格上げの決め手となったことは言うまでもありません。つまり、計算社会科学研究センターが、経済経営研究所内の組織から、全学基幹研究推進組織として認められたのは、凌霜会員の皆様のご支援の賜物に他ありません。皆様のご支援のお蔭で、ジャーナルの創刊に繋がり、さらにセンターの全学組織化へと繋がりました。

 これから神戸大学が社会科学に強い総合大学として生き残り、さらに発展するために、凌霜会員の皆様のこれまでと変わらぬご支援・ご鞭撻を心よりお願い申し上げます。