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新着情報

2023年10月10日
会誌「凌霜」

凌霜第439号

 

凌霜439号目次

 

表紙写真 昭45経 神 谷 隆 史

カット  昭34経 松 村 琭 郎

 

◆巻頭エッセー

100%民間資本による大学ファンドの設立   松 尾 貴 巳

新型コロナ下での3年間を経て        番   尚 志

目 次

◆母校通信   南   知惠子

◆六甲台だより   行澤一人、鈴木 純、清水泰洋、四本健二、村上善道

◆本部事務局だより   一般社団法人凌霜会事務局

第12回定時総会開催/播磨支部設立記念総会開催

東北支部設立記念総会開催/第5回支部代表者会議開催

第16回(令和5年度)社会科学特別奨励賞(凌霜賞)授与式

ご芳志寄付者ご芳名とお願い/事務局への寄附者ご芳名

◆(公財)六甲台後援会だより(74)

◆大学文書史料室から(48)   野 邑 理栄子

◆学園の窓

韓流ドラマで法学入門   馬 場 健 一

類まれなる研究環境である神戸大学   柴 本 昌 彦

コミュニケーションを科学する   定 兼   仁

プログラミングの活用   宮 川 栄 一

◆表紙のことば 芦ノ湖湖畔、秋色   神 谷 隆 史

◆六甲アルムナイエッセー

自覚から飛躍へ キャリア支援の大切さ   今 﨑 良 平

サード・キャリア   大 住 敏 之

◆凌霜ネットワーク

陸上競技部、16年ぶりに1部昇格!   絹 田 清 昭

神戸大学ラグビー部創部100周年記念式典   田 中 計 久

神戸大学剣友会創設百周年記念行事   納   賢 一

第9期ミニMBA活動報告   岩 井 悠里子

◆六甲台就職相談センターNOW

現代学生気質―若者への期待―   浅 田 恭 正

◆凌霜ひろば

白陵寮(昭和32年一寮一階在寮生)第16回同窓会(最終回)に寄せて   嶋 村 禎 二

「アマチュアブロガー」のすすめ   當 麻 芳 輝

◆クラス会 しんざん会、珊瑚会、むしの会、神戸六七会

◆支部通信 東京、奈良県、神戸、播磨

◆つどい 竹中ゼミ、凌霜謡会、二水会、シオノギOB凌霜会、

水霜談話会、大阪凌霜短歌会、東京凌霜俳句会、

大阪凌霜俳句会、凌霜川柳クラブ、

神戸大学ニュースネット委員会OB会

◆ゴルフ会 廣野如水凌霜KUC会、茨木凌霜会、

芦屋凌霜KUC会、花屋敷KUC会

◆物故会員

◆国内支部連絡先

◆編集後記   行 澤 一 人

◆投稿規定

<巻頭エッセー>

[100%民間資本による大学ファンドの設立]                                          神戸大学副学長

㈱神戸大学イノベーション代表取締役社長

経営学研究科教授 松  尾  貴  巳

 

令和5年1月、㈱神戸大学キャピタル(KUC)は、国立大学としては初となる民間資本100%のベンチャーキャピタルファンド(神戸大学1号ファンド)を組成し、ベンチャー企業への投資を開始しました。ファンドの規模は22億円です。本ファンドの主な投資対象は、神戸大学の研究シーズを活用して新たな価値創出を試みる神戸大発ベンチャー、神大卒業生が起業しているベンチャー、神戸・関西地域を中心とした他大学・研究機関発シーズをベースにした神戸・関西地域発ベンチャーです。

神戸大学のファンドの特徴は3つあります。1つは、神戸大学系列企業であるKUCによる自律的・主体的な投資活動であること、2つは、民間資本100%のファンドであること、3つは神戸大学を含む神戸地域のベンチャー企業支援のためのファンドであることです。

ファンドを運営しているKUCは、神戸大学の技術移転・ベンチャー創出支援等の事業を行っている神戸大学100%出資の子会社である㈱神戸大学イノベーション(KUI)の100%子会社であり、KUCは神戸大学の孫会社です。

研究・発明から事業化までのプロセスにおいて、研究・発明段階では、神戸大学内の学術研究推進機構が様々な研究資金獲得のための支援を行っています。研究の社会実装化は多様であり、特許取得による知財化とライセシングに発展し、研究者による事業化に至る場合もあります。事業化に向けた研究の具体化には研究目的とは性質の異なる資金支援が必要となり、創業後は事業会社として成長するための事業資金が必要となります。神戸大学の研究者が起業した場合でも、大学としては知財ライセンス収入を得ることが可能です。知財ライセンス収入は一定期間の継続的な収入を期待することができるため、起業した会社数とその成長に応じてライセンス収入の増加が期待できます。大学に入ったライセンス収入を研究や事業化に向けた起業準備支援に使うことで、研究の社会実装に向けた支援を充実させる好循環が期待できます。

神戸大学の場合、知財化、創業支援までを大学子会社のKUIが受け持ち、創業後の資金支援を孫会社のKUCが受け持ち、神戸大学産官学連携本部がグループ会社を統括しています。令和4(2022)年度からは、すべての国立大学を対象に、地域金融機関などが設置したベンチャーファンドにLP(Limited Partner)出資できるようになりました。これに対して、神戸大学は、神戸大学と理念・ビジョンを共有する孫会社(KUC)がGP(General Partner)としてファンドを自律的・主体的に運営管理しています。大学の系列企業であることで、神戸大学、KUIと連携し、一貫性のあるシームレスな支援を実現しています。シームレスな伴走は、事業化の可能性を高めると共に、投資リスクの軽減につながると考えています。

神戸大学のファンドは、既存4大学(東大、京大、阪大、東北大)のファンドと異なり、民間資本100%のファンドです。民間資本であることで、投資先の選定において神戸大学発ベンチャーに限定することなく柔軟に投資することが可能です。神戸大学は2021年、神戸大学、神戸市、三井住友銀行の三者間で『スタートアップエコシステム形成促進に関する協定書』を締結し、神戸地域のベンチャー企業育成にも取り組んでいます。民間資本であることで、大学以外の神戸・関西地域のベンチャー企業にも投資することができ、地域の発展にも貢献することができると考えています。

現在すでに7社に投資していますが、神戸大学発ベンチャーが5社、神戸大卒業生ベンチャーが1社、地域発ベンチャーが1社であり、投資ステージもプレシード案件からレイター案件までバランスの良いポートフォリオを組むことが可能になっています。実績を上げることで、国からの出資に依存することなくファンドを増やしていくことが可能です。

令和2(2020)年に文部科学省が公表した「国立大学法人の戦略的な経営実現に向けて~社会変革を駆動する真の経営体へ~ 最終とりまとめ」では、国立大学法人は、「納税者である国民はもとより、学生、卒業生、研究者、学界、産業界、地方自治体をはじめとした国内外の多様なステークホルダーと積極的に関わり合い、拡張した機能による活動が新たな投資を呼び込むことで、社会変革の駆動力として成長し続ける戦略的な大学、いわば真の経営体に転換することが急務である」とされました。多様なステークホルダーとの連携、共創を通じて経済社会システムを変革させる大学経営モデルに転換することが促されており、自律性を高め、各大学独自の資金循環システムを構築することが求められています。

神戸大学の場合は、2030年を見据えた長期ビジョン「KU VISION 2030」を策定し、「知と人を創る異分野共創研究教育グローバル拠点」となることを目指しており、人文・人間科学、社会科学、自然科学、生命・医学のコラボレーション、基礎科学と実践的な応用研究との共創によって新たな知の創出に取り組むことで、イノベーション、社会実装を目指しており、そのための知財、資金循環に関わる戦略とそれを実現するための仕組みの整備・強化を行っています。

大学ファンドとしては既に、4大学(東北大、東京大、京都大、大阪大)のファンドが設立・運用されています。これは、平成25(2013)年施行の「産業競争力強化法」、平成26(2014)年施行の「改正国立大学法人法」により、4つの国立大学が大学ファンドを通じて大学発ベンチャーへの出資ができるようになったものです。

同じ時期、神戸大学は2016年に科学技術イノベーション研究科の一部の教員と民間企業が出資して設立した基金を通じて、㈱科学技術アントレプレナーシップ(STE社)を設立し、大学発ベンチャーへの投資を行いました。DNA合成を行う㈱シンプロジェン社、ゲノム編集を行う㈱バイオパレット社など、投資した企業はすべて注目を集めていますが、STE社の投資余力は限られており、またバイオ分野に特化したものです。神戸大学が長期ビジョンを実現するためには、社会科学分野を含めより広い分野において、今後神戸大学および地域の生み出した学術、研究成果等を効果的に社会実装につなげていく仕組みが必要でした。そのため、知財の社会実装については、令和2(2020)年に承認TLOとして、㈱神戸大学イノベーション(KUI)を子会社として設立し、令和3(2021)年にファンド運営管理会社であるKUCを設立し、今回のファンド組成の準備を行ってきました。1号ファンドの規模は22億円程度と、ファンドとしての規模は小さいものですが、実績を評価いただき、より幅広く民間資金を集める2号ファンドにつなげていきたいと考えています。

 

<巻頭エッセー>

[新型コロナ下での3年間を経て ]

番     尚  志(昭44営)

(凌霜会副理事長、神戸大学東京六甲クラブ理事長)

 

はじめに

2020年初頭から新型コロナウイルスによるパンデミックが発生し、世界各地で多大な犠牲者が報告され、わが国においても新型ウイルスとの国をあげての闘いが行われた。国民も(政府も、企業も、団体も)、緊急事態への対応という、これまで経験をしたことがない生活(活動)を余儀なくされた。あれから3年余、わが国においても未曽有の犠牲者を出した新型コロナは、ワクチン開発の効果もあり漸く沈静化し、政府の諸規制も緩和され、国民生活も新型コロナ感染拡大以前の水準に戻りつつある。

この間、神戸大学東京六甲クラブは、クラブ発足以来ともいえる大きな影響を被り、この克服とともに、新たに生じた課題に取り組むこととなった。

 

神戸大学東京六甲クラブの歩み

今更ながらではあるが、神戸大学東京六甲クラブの設立とその歩みについて、少し触れさせていただきたい。

凌霜会が社団法人として設立認可されたのが1924年8月、凌霜会東京支部が組織化されたのが1950年と聞き及んでいる。当時の東京支部には、自前の施設は無く、如水会館などの他施設を利用しながら会合等が行われていた。

「凌霜会東京支部の会員が集える独自の施設を持ちたい」との会員有志の念願に応えるため、出光興産㈱創業者であり、社長であった出光佐三氏(1909年神戸高商卒)により、1966年に新築された帝劇ビルの同社本社内に「神戸大学東京凌霜クラブ」が設立された(1970年に現在の帝劇ビル地下2階に移転し、今日に至る)。現在の所管面積は約60坪あり、各種講演会、研修会、サークル活動、懇親会など、広く利用されている。

同クラブは、2011年に「神戸大学東京六甲クラブ」に改組し、神戸大学の全学部の卒業生が集う関東地区の拠点として活動している。神戸大学東京六甲クラブ(以下「当クラブ」と略す)は、所謂会員制クラブとなっており、神戸大学全学部の卒業生の内、会費(年1万円)を納付した会員によって運営されている。

新型コロナ感染拡大前は、会員数1、000名余りで、年間の収支は、収入は会費及び会員有志からの寄付金約1、500万円と飲食サービスによる差益約1、500万円計約3、000万円、支出はクラブ賃借料約1、800万円(管理費込み)と人件費及び事務所等経費約1、200万円計約3、000万円と収支均衡していた。

 

新型コロナによる激震

2020年初頭からの新型コロナ感染拡大により、同年4月に緊急事態宣言が発令されることとなり、当クラブを閉鎖せざるを得なくなった。緊急事態宣言解除後は、飲食サービスの停止を始め感染防止対策を講じるとともに、Zoom利用によるリモート会合等を取り入れながら活動を再開したが、施設の利用者は激減し、当クラブは依然として実質的閉鎖状態を余儀なくされた。

施設の利用ができないこともあり、会員数は800名余りにまで減少し、飲食サービスによる収益も皆無となり、人件費や事務所経費の大幅な削減に努めたものの施設賃借料年間1,800万円の支払いが大きな負担となり、2020年度は年間1,000万円を超える赤字となることが推定された。当時の手持ち資金は約1,100万円程度。1年後には財政破綻の恐れが迫っていた。2020年度からは、常勤従業員を廃止し人件費を大幅に削減、公的支援金を収受するとともに、会員に寄付を募り約800万円の収入を得るなど収支の均衡を保つ最大限の努力を重ねた。

しかしながら、当クラブの財政破綻を避けるには、年間の賃借料1,800万円を大幅に引き下げるしか方策がなく、家主側と交渉を開始した。残念ながら、家主側は若干の引き下げ(2020、2021年度は年間60万円)に応じたのみだった。これには家主側の事情がある。当クラブが入居する帝劇ビルは、前述のとおり1966年に建築されたもので既に築50年を経過しており、隣接する国際ビルとともに再開発が検討されていた。再開発に際して支障となるのは、当クラブのようにテナント有利とされる普通賃貸借契約で入居している古くからのテナントで、これらをいかにしてスムーズに退去させることができるかで再開発のスケジュールが左右される。これまで当クラブが賃料値下げ交渉を行った際にも普通賃貸借契約から定期賃貸借契約(家主側有利)への変更が条件とされ、当クラブ側がこれを断り、値下げ交渉がまとまらなかった経緯がある。一方、普通賃貸借契約を維持するには、テナントは定められた賃借料を契約通り支払い続けることが条件となる。当クラブが年間1,800万円の賃借料の支払いが困難となり、契約不履行により退去せざるを得なくなる事態も想定された。

結論を急ぐと、普通賃貸借契約の継続は難しいとの結論に達し、2022年2月の理事会、3月の臨時代議員総会の審議を経て、当クラブは年間賃借料(管理費を除く)の70%引き下げ(年間1,100万円引き下げ)、2025年3月末までの退去(原状回復義務の免除)等を条件とした定期賃貸借契約(2022年4月1日から2025年3月31日までの3年間契約)への変更を家主側に求めることを決定し、家主側には誠意をもってこれに応じていただいた。2022年9月、国際ビルの所有者と帝劇ビルの所有者は、両ビルの建て替えのため2025年3月末日での両ビルの閉鎖を発表した。

 

これからの活動

1966年の当クラブ設立を始め、その後の当クラブの維持、運営に多大なご尽力をいただいた先輩の皆様には、建て替えとはいえ設立以来57年間利用してきた当クラブの帝劇ビルでの活動を継続できなくなったことに対し、誠に申し訳なく思っております。

今後は、当クラブ施設の移転先を早急に決める必要がありますが、当クラブの活動の在り方の再検討も併せて進めてまいります。とりわけ、コロナ問題以前から課題となっている会員数の減少(当クラブの活動の中心となってこられた昭和20年代・30年代卒業の諸先輩のご逝去による減少、若い卒業生の未入会)をいかにして回復させるかのための諸施策を実施するために必要な施設を確保したいと思っております。

例えば、当クラブは経済学部OBでMBAの資格を持つO氏を講師とするミニMBA講座を開講しています。20代、30代の卒業生を対象に、1日3時間の講座を27回ワンセットで行い、今月9期目の修講生を送り出しました。既に修講した卒業生は約200名に達しており、若手会員へのクラブ魅力を高めることに大いに貢献しています。ミニMBA講座以外にもこのような取り組みを進め、20代、30代、40代の方々にも当クラブの活動を広げてまいりたいと考えています。

また、神戸大学東京オフィスとの連携を一層深めるとともに、昨年12月に設立された「One 神戸大学」を目指す「神戸大学校友会」の活動にも積極的に参加し、神戸大学、神戸大学の現役の皆様にもお役に立てる活動、施設づくりに努めてまいります。

最後になりますが、前述しましたとおり「神戸大学東京凌霜クラブ」は「神戸大学東京六甲クラブ」となり、全学部の卒業生を対象とした組織に改組されましたが、現在の会員の70%以上が凌霜会の皆様です。凌霜会の皆様のご支援があってこそ当クラブが成り立ち、関東における神戸大学卒業生全体の学びの場、交流の場を提供することが可能となります。もちろん、他学部の卒業生にも会員の輪を広げる努力を続けてまいりますが、凌霜会の皆様には引き続き当クラブへのご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。

 

連絡先

神戸大学東京六甲クラブ

住所:〒100―0005

東京都千代田区丸の内3―1―1 帝劇ビル地下2階

TEL: 03―3211―2919

e-mail:tokyo@rokko-club.jp  https://www.rokko-club.jp