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新着情報

2024年1月19日
会誌「凌霜」

凌霜第440号

 

凌霜四四〇号目次

 

表紙絵 昭42営 仲 埜 啓 介

カット 昭34経 松 村 琭 郎

 

◆年頭にあたって   大 坪   清

目 次

◆母校通信   松 尾 貴 巳

◆六甲台だより   行澤一人、鈴木 純、清水泰洋、四本健二、村上善道

◆本部事務局だより   一般社団法人凌霜会事務局

代議員選挙のお知らせ/凌霜会創立100周年記念式典

ホームカミングデイの開催/ご芳志寄附者ご芳名とお願い

事務局への寄附者ご芳名

◆(公財)六甲台後援会だより(75)

◆大学文書史料室から(49)   野 邑 理栄子

◆学園の窓

「イノベーションとは何か?」を講義しながら思うこと   中 村 健 太

着任に至るまで   安 間 陽 加

バンコクでの研究生活   井 上   武

戦後の卒業アルバムと学内メディアで見る「ここが変わった神戸大学」   住 田 功 一

◆六甲アルムナイエッセー

六甲台での出会いを心の糧として   高 松 牧 人

◆表紙のことば 屋台練り合わせ   仲 埜 啓 介

◆凌霜ネットワーク

水泳部創部100周年記念凌泳会全国大会   長谷川   健

あなたの町でZ世代の出張落語会はいかがですか?   近 田   昌

第1回サムライ凌霜会(名刺交換会)   野 田 敬 二

◆六甲台就職相談センターNOW

就活意識と行動~コロナ期・ビフォーアフター~   浅 田 恭 正

◆クラス会 しんざん会、さんさん会、珊瑚会、イレブン会、

むしの会、双六会

◆支部通信 東北、東京、京滋、神戸、愛媛県

◆つどい 水霜談話会、大阪凌霜短歌会、東京凌霜俳句会、

大阪凌霜俳句会、凌霜川柳クラブ、

神戸大学ニュースネット委員会OB会

◆ゴルフ会 名古屋凌霜ゴルフ会、廣野如水凌霜KUC会、

茨木凌霜会、芦屋凌霜KUC会、花屋敷KUC会

◆追悼 都倉康之君(昭37経)を悼む   島 田   恒

◆物故会員

◆国内支部連絡先

◆編集後記   行 澤 一 人

◆投稿規定

 

<年頭にあたって>

 

一般社団法人凌霜会理事長 大  坪     清

(レンゴー㈱代表取締役会長兼CEO)

 

凌霜会会員の皆様、新年明けましておめでとうございます。各地で穏やかに、そして健やかに新年を迎えられたことと心からお慶び申しあげます。

 

今年は、凌霜会が1924(大正13)年9月の設立から、めでたく100周年を迎えることになります。諸先輩方が築き上げてこられた凌霜の歴史を守っていくとともに、次代を担う若い凌霜の皆様へ歴史と伝統を引き継いでいけるよう、そして会員各位にとって有益かつ有意義な組織であり続けるよう、会の運営に全力を尽くす所存です。皆様には、これまで以上のご支援ご鞭撻を賜りますようお願い申しあげます。

 

昨年を振り返りますと、5月に新型コロナウイルス感染症の位置づけが5類へと移行してから、ペントアップディマンドの顕在化、インバウンドディマンドの回復などによって、経済が正常化に向けて動き出し、明るい兆しが見えてきました。岸田政権は「新しい資本主義」に基づく政策を続けてきていますが、この政策が目指す「成長と分配の好循環の実現」が視野に入ったように思われます。一方で、エネルギーや食料品などの価格の高騰が家計に大きな影響を与えており、減税や給付金などの経済対策、中小企業を含む賃上げの動向が非常に重要になってきます。

日本銀行は、7月の金融政策決定会合でイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)を柔軟に運用する方針を決定し、10月には長期金利が1%を一定程度超えることを容認することを決めました。これまでの大規模な金融緩和政策を当面維持される見込みですが、今後の変更に備えていく必要があります。

 

世界に目を向けますと、2022年2月に勃発したロシアによるウクライナへの軍事侵攻は長期化の様相を呈し、いまだ停戦への糸口を見出すことができていません。

中東ではイスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスが戦闘状態に突入し、民間人にも多くの犠牲が出ています。こうした危機的な事態が周辺国へ拡大し、中東地域への紛争に発展するおそれもあります。

パレスチナとイスラエルをめぐる中東問題は、二千年に及ぶ混乱の歴史ともいえますが、民族の対立、宗教上の違いなどに加え、周辺諸国、米国、ロシアなど大国の思惑も複雑に絡み合い、解決への道のりが見えない非常に難しい問題です。

中国の情勢は、不透明な要素を抱えた重要な展開が続いています。習近平国家主席率いる中国共産党政権は、独裁政権ともいえる強権的な体制を維持していますが、外相、国防相を続けて解任するなど、政治的な不安定さが見受けられます。また、恒大集団(エバーグランデ)の経営危機や不動産バブルの崩壊などを背景に、経済的にも減速傾向が目立ち始めています。「一帯一路」構想もかつての勢いを失いつつあり、中国の地政学的影響力にも変化を及ぼすかもしれません。中国共産党政権は経済、社会、政治の安定を維持するために、海外により目を向けていくことも考えられます。

台湾では、この1月に総統選挙が控えており、対中政策が焦点になっています。この選挙結果が、日本を含めた地域の安定に大きな影響を与える可能性があり、注視していく必要があります。

こうした世界の状況を踏まえると、私たちは、国のあり方、つまり国富、国益、国防についても危機感と責任感を持って本格的に考えなければならない時期にきているといえるでしょう。

ドイツの哲学者であるマルティン・ハイデッガーは、その著書『存在と時間』の中で、人々が日常生活に没頭し、本来の存在を見失うことを「頽落」と表現しましたが、人々が知らず知らずのうちにそのような状態に陥ってしまうことを危惧しています。

 

千年以上にわたりヨーロッパに君臨した古代ローマ帝国が、衰退し、滅亡した理由の一つとして「パンとサーカス」があります。古代ローマ帝国は、経済力を強めて巨大になっていきましたが、それを統治するだけの政治力を保つことができませんでした。市民は、政府に対して生活の面倒を見るように要求するようになり、政府は市民を満足させるために、無償で、食料を提供し見世物小屋を作り剣闘士の試合を見せるなどした結果、市民は政治的な関心と、かつて持っていた道徳観、公共精神、勇気を徐々に手放してしまいました。

 

「VUCAの時代」と呼ばれる現在において、世界中で大きなパラダイムシフトを迎えています。私たちは、「パンとサーカス」のように現状に甘んじたり、伝統や慣習に流されて行動したりするのではなく、自分の頭で考える、ということが求められています。自分自身の頭で考え、どのようなことが起きているのか、何が重要であるのかを正しく掴みとって、自分なりの答えを導き出すことが必要なのです。世界中のあらゆる課題について、自分自身に関係した事柄として捉えなければなりません。

同時に、各自の偏見、“prejudice”を持つことが大切です。日本語で「偏見」といえば偏った考え方のことですが、“prejudice”は“pre”+“judge”、すなわち事前に自分で判断したものを表現した言葉です。自分で考えて仮説を立て、それでまずやってみるということを繰り返すことで、あらゆる難しい局面も乗り越えていくことができるのではないかと思います。

さて、母校神戸大学では、世界を先導する卓越した研究が展開されており、昨年10月にデジタルバイオ・ライフサイエンスリサーチパーク推進機構を設置し、カーボンニュートラルやウェルビーイングなどの社会的課題の解決に取り組まれています。また、大学の総合知を活かして、産学官連携によるイノベーションエコシステムの強化、スタートアップの育成も積極的に推進されています。

神戸大学は「学理と実際の調和」という建学の理念の下、「真摯・自由・協同」の精神を発揮し、社会で活躍する多くの人間性豊かな人材を創出してきました。これからも時代の変遷に即した変革を推し進めることにより、新たな価値を創造し続けていかれることと期待しています。

 

凌霜会につきましては、設立100周年を迎えるこの2024年に、六甲台が世界的に評価される神戸大学の柱であり続けるために、世界トップレベルの研究、卓越研究者の継続的な育成、学生の幅広いキャリアパスを実現する教育の充実を目的とした「六甲台活性化プロジェクト(仮称)」、学生が自由に勉学や懇談をできる場所を提供する「凌霜ガーデン(仮称)」の設置に取り組み、また本年4月には創立記念式典の開催を予定しています。

 

2024年の干支は甲辰(きのえたつ)です。「甲」は十干の一番目にあたり、固い種子のように耐え忍ぶ状態や、生命や物事の始まり、成長を意味するとされ、「辰」は草木が根をしっかりと張って伸びていこうとする姿を現しています。こうしたことから2024年は、成長と発展の年になるのではないでしょうか。

関西では、昨年のプロ野球日本シリーズで、阪神タイガース、オリックス・バファローズの関西ダービーで大変な盛り上がりを見せました。サッカーJリーグでもヴィッセル神戸が悲願の優勝を達成しました。

本年も関西が大きな存在感を示し、来年2025年に控えている大阪・関西万博の開催へとつながる活力ある年になることを期待しています。

 

最後になりましたが、凌霜会諸兄姉の皆様には日頃から、会員の増強、寄附金など多岐にわたるお願いをしておりますが、今後も引き続き、凌霜生としての誇りと絆を繋ぐよりどころとしての当会活動を何とぞご支援賜りますとともに、我々も凌霜会の目的である「会員相互の研鑽と親睦」そして「母校支援」を胸に、共に母校のより一層の発展に向け努力してまいりたいと存じます。

本年が皆様にとって素晴らしい年となりますことを心より祈念申しあげ、新年にあたってのご挨拶とさせていただきます。